秋ヒロト
平安時代の日記文学を読んでいると、今ではもう残っていない物語の名前が出てくることがあります。印刷技術のない時代は人が手で写すしかなく、残念ながらすべての写本が失われてしまうことがあるのです。現存していないとなると、なおさら読んでみたくなるもので、もしもタイムトラベルができたら、そういう失われた物語を探しにいきたい気がします。
一番読んでみたいのが、最初の方が失われている「浜松中納言物語」で、三島由紀夫の「豊饒の海」(『春の雪』『奔馬』『暁の寺』『天人五衰』の四部からなる長編小説)に影響を与えたとも言われる、輪廻転生の物語です。歴史や物語が、本という形で脈々と受け継がれるというのは、考えてみたらすごいことだよなあと、そんなことを思いながらこの回を描いていました。(2015.06.25)