秋ヒロト
今回は、ぼくが今まで読んだ中で一番怖かった小説の話を。怪談やホラーでお馴染みの、幽霊や殺人鬼が出て来る物語も怖いですが、あまりにも現実とかけ離れているだけに、かえってフィクションとして楽しめる感じがあります。
一方、身近にあって襲われると怖いのが、なんといっても虫。いわゆるホラーではないのですが、スイスの作家ゴットヘルフに『黒い蜘蛛』(岩波文庫)という小説があります。悪魔のような存在との約束を守らなかったために、呪いをかけられてしまった村人たち。ほほに黒いしみが出来て、なんだか痛いなあと思っていると、そのしみから脚が飛び出し、徐々に黒い蜘蛛になっていって……。
リアルに想像出来るだけに、読んでいて恐ろしく、鳥肌が立つこと請け合いの物語。本自体が手に入りづらいかもしれませんが、短い作品ですし、善と悪をめぐるテーマ的にも面白い一冊なので、機会があればぜひ。(2014.10.16)